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多尿と多飲は病気のサイン!?

竹林賢作

竹林 賢作

私たち人間も犬猫も体の約60%は水分でできているため、水分の摂取は体にとってとても大切です。
また腎臓の働きにより老廃物や毒素、過剰な成分を尿と一緒に排泄することで、
体内を正常なバランスに保っています。
飲水と尿、一見たくさん飲んでたくさん尿をすることが健康と思いがちですが、
じつは多尿(おしっこが多いこと)多飲(水を多量に飲むこと)は病気のサインの可能性があります。

 

水をたくさん飲むから尿がたくさん出る?

尿を作るのは腎臓の働きです。
具体的には腎臓には血液をろ過する働きがあり、そこでできた尿のもと(原尿)から
水分や必要な栄養素を回収し血液中に戻すことで、濃縮された少量の尿がつくられます。

何らかの原因で腎臓が尿を濃縮する働きが低下すると、
色のうすい尿がたくさん作られ、多尿の症状がみられます。
すると体から水分が失われているのを脳が感知し、水をたくさん飲むようになります。

もちろん無理してたくさんの水を飲めば、過剰な水分を排泄するために尿量は多くなりますが、
犬や猫でそれが起こることはあまりありません。

つまり、たくさん水を飲むから尿量が多いのではなく、尿(水分)がたくさん出てしまい、
のどが渇いてしまうためにたくさん水を飲んでいるわけです。

「最近やたら水を飲んでるせいで尿が多いから、お水を抜いてしまおう」

これは絶対にやってはいけません。
病気の場合にはお水を飲まなくても尿は濃縮されずどんどん作られてしまうため、
脱水が進んでしまい非常に危険です。

多尿多飲の見つけ方

①基準値

ではどれくらいからが多尿、多飲になるなのでしょうか。
じつは犬も猫も明確な基準が決まっているわけではありません。
食べ物の水分量(ドライフードか缶詰か)や種類、活動性によっても飲水量や尿量は変わってくるからです。

ただおおよその基準として

尿量→犬では体重1kgあたり50ccc以上で多尿
飲水量→犬では体重1kgあたり70cc以上で多飲、1kgあたり100cc以上ではあきらかな多飲
猫では体重1kgあたり50cc以上で多飲
といわれています

②自宅での確認ポイント

自宅で尿量・飲水量を測っていただけると、診察でとても参考になりますが
それがむずかしい場合にも以下のチェックリストに当てはまることがないか確認してください

  • □ 水をいれた器がすぐに空っぽになる
  • □ ペットシーツを頻繁に交換するようになった
  • □ トレイの砂の塊が大きくなった(猫)
  • □ おしっこの色がいつも水のように薄い
  • □ 自宅でトイレをしていなかったのにがまんできなくなった(犬)

 

③動物病院で尿検査をしよう!

①②で気になる項目が見つかったら、動物病院での尿検査を依頼しましょう。
とくに尿の濃さ(尿比重)を測定することで、腎臓がしっかりと
尿を濃縮することができているのかを調べることができます。
検査の注意点として

  • ◯ 液体の尿を持っていくこと(ペットシーツや猫砂では検査できません)
  • ◯ できれば朝一番の尿を採取しましょう
    水をあまり飲まない寝ている間が一番濃い尿が作られます
    そのため朝一番の尿を検査することで、正確に腎臓の機能を評価できます

 

当院では尿採取に便利な容器をお渡ししていますので気軽にご相談ください。
具体的な方法や検査については別の記事でご説明します。

 

多尿多飲になる原因は?

  • 腎臓の病気   慢性腎臓、腎盂腎炎
  • ホルモンの病気 クッシング症候群、アジソン病、糖尿病、甲状腺機能亢進症
  • 高カルシウム  上皮小体機能亢進症、がん
  • 重篤な炎症   子宮蓄膿症、膵炎など
  • 肝臓の病気   肝不全
  • お薬      利尿剤、ステロイド剤
  • 尿崩症     脳からのホルモン分泌異常
  • 心因性     精神的なストレス、空腹など

このうち心因性によるもの以外はすべて多尿が原因で多飲を引き起こします。
そのため自分で十分に水を飲めない場合には脱水がおこってしまいます。

特に多尿・多飲以外にも症状がある場合、(元気がない、食欲がない、吐いているなど)
すぐに治療が必要な病気も多いため、できるだけ早く病院で検査を受けてください!
動物病院では血液検査や超音波検査、ホルモン検査などを行い、これらの病気を診断していきます。

 

まとめ

  • ◎ ほとんどの病気は多尿→多飲!お水は十分に飲ませましょう
  • ◎ 多尿多飲に気づいたら?
    •  ✓ まずは尿検査を行いましょう
    •  ✓ 調子が悪いときはすぐに病院に行って原因を調べましょう

 

病院で診察しているだけでは、獣医師は多尿多飲に気づけません。
日頃から自宅でワンちゃんネコちゃんの様子を確認しておき、気になることを何でもお話していただけると病気の早期発見につながります。

竹林賢作

竹林 賢作

小さなころから生き物が好きで、動物博士になることが夢でした。動物図鑑に夢中になり、「動物奇想天外!」などのTV番組をかじりつくように見ていました。犬や猫に囲まれた思春期をすごし、大好きな動物のことをもっと勉強したい、病気の動物を助けたい、という思いで獣医大学へ憧れた獣医師になってもうすぐ9年、これからもペットとご家族の幸せのために努力していきたいと思います。