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診療カルテ#1 膀胱腫瘍の猫

竹林賢作

竹林 賢作

診察で遭遇した症例の一部をご紹介していきます

最初の症例は11歳、去勢済みの雑種猫ちゃんです

 

皮膚にできた良性のできもの術前検査のためにお腹の超音波検査を実施しました。肝臓や腎臓など主な臓器に異常はありませんでしたが、膀胱に何やら怪しい影が見つかりました

 

 

膀胱背側の軟膜から内側に突出するようなポリープです。周囲のリンパ節は腫れていないようです。

膀胱のポリープは大きく炎症性と腫瘍性(ほとんどが悪性腫瘍)に分けられますが見た目だけでは判断できません。飼い主さまと相談の結果、皮膚の手術は予定通り実施し、全身麻酔をかけている間にポリープの細胞検査行うこととしました。

膀胱のポリープの検査は尿道(男のなのでペニス)から柔らかいカテーテルを挿入して吸引をかけることで、細胞を吸い取ってきます。麻酔をかけなくでも実施可能です。

細胞診検査からは写真の様な円形の細胞が沢山採取され、膀胱の「移行上皮癌」が強く疑われました

 

 

後日全身麻酔にて膀胱の部分切除を実施しました。袋状になっている膀胱の一部を切り取って元通りの形に縫い合わせる手術です。腫瘍を取り残さないように余裕を持って切り取り、尿が漏れないように丁寧に縫合します。

 

 

手術後は数日間、膀胱が膨らまないようにカテーテルを入れた状態で入院してもらいます。カテーテル抜去後に自力で排尿ができることを確認してから退院しました。
退院後しばらくは頻尿がみられていましたがすぐに治り、元気食欲も問題ないようです。

病理検査の結果は細胞診検査と同様に「尿路上皮癌(移行上皮癌)」との診断でした。手術マージンクリーンでした。今後は再発や転移が見られないかどうか経過観察を行います

 

膀胱腫瘍は血尿や膀胱炎の症状から発見されることが多い病気です。
今回は特に症状が無く、他の手術のための術前検査でたまたま発見できたケースでした。あまりに大きくなってしまうと膀胱は手術が難しくなってしまいます。高齢の猫ちゃんでの健康診断の重要性が再確認される症例でした。

竹林賢作

竹林 賢作

小さなころから生き物が好きで、動物博士になることが夢でした。動物図鑑に夢中になり、「動物奇想天外!」などのTV番組をかじりつくように見ていました。犬や猫に囲まれた思春期をすごし、大好きな動物のことをもっと勉強したい、病気の動物を助けたい、という思いで獣医大学へ憧れた獣医師になってもうすぐ9年、これからもペットとご家族の幸せのために努力していきたいと思います。