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当院のワクチン接種の考えかた-犬 ver.-

竹林賢作

竹林 賢作

新型コロナウイルスのニュースが毎日のようにニュースになっていますが、そんななか新しいワクチンの開発がすすみ、感染症の予防や鎮圧に期待されています。

感染症を予防する上で大切なワクチン、
大切な家族であるワンちゃん、ネコちゃんにも定期的に接種をされている方が多いか思います。

当院でも診療科目の予防医療のひとつとして、ワクチンの接種は大変重要なものと考えています。

一方で「どのワクチンが必要なのかわからない」「高齢だからワクチンは打ちたくない」「ワクチンアレルギーが心配」そういったご質問も多くいただきます。

当院ではWSAVA(世界小動物獣医師会)が提唱している「犬と猫のワクチネーションガイドライン」に基づき、ペットそれぞれにとって最適な接種プログラムを、飼い主様と一緒に選んでいます。
ガイドラインは下記ページからどなたでもご覧いただけます。

https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

今回はその中から大切な部分をピックアップしてご紹介します。

*このページは犬のワクチン接種について、当院の考え方を記しています猫のワクチンについてはこちら猫編をご覧ください(リンク)
*狂犬病ワクチンは法律により毎年の接種が義務付けられているため、今回は割愛します

 

犬のワクチン分類の基本

コアワクチン   ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス(2型)、犬パルボウイルス

ノンコアワクチン 犬パラインフルエンザウイルス、犬レプトスピラ症

非推奨ワクチン  犬コロナウイルス*

*COVID-19とは異なるウイルスです

WSAVAはワクチンを、予防できる感染症ごとにコアワクチンとノンコアワクチンに分類しています。
コアワクチンは生活環境にかかわらず、全ての動物に必要とされているものです。
一方、ノンコアワクチンは生活環境に応じて接種を考慮するべきワクチンです。

すべての動物にコアワクチンを接種し、ノンコアワクチンは必要な場合に限り接種を行うこ
これがWSAVAの提唱しているガイドラインの基本原則です

 

動物病院で接種できるワクチンの種類

⑤種  ジステンパー/犬伝染性肝炎/アデノ2/パルボ + パラインフルエンザ(ノンコア)

⑥種  基本の5種 +犬コロナ(非推奨)

⑦種  5種 +レプトスピラ2種(ノンコア)

⑧種  5種 +犬コロナ+レプトスピラ2種「カニコーラ」「イクテオヘモラジー」

⑩種     5種 +犬コロナ+レプトスピラ4種(上記2種に加えて)「ポモナ」「グリッポチフォーサ」

 

現在動物病院で多く用いられているワクチンは上記のものがあります
沢山ありますがワクチンを選ぶ際に必要なことはノンコアワクチンであるレプトスピラ病を予防する必要があるかどうかです。

レプトスピラ感染症はおもにネズミなどの野生動物によって媒介され、田んぼや沼、湖などで感染のリスクがあります。そうした野生動物が生息する地域、特に山や川などのアウトドアで遊びに行くような場合には、レプトスピラ症が含まれているワクチン(7, 8, 10種)がすすめられます。

ただし、レプトスピラ症は上記(2-4種)以外にも様々な型が存在し、異なる型には予防効果がはたらきません。レプトスピラ症ワクチンを接種している場合にも感染には十分に注意する必要があります。

ちなみに当院では犬のワクチンは5種or7種を用意しています。
6種、8種に含まれている犬コロナウイルスはガイドラインでは非推奨ワクチンであること、
レプトスピラのうちポモナ、グリッポチフォーサについては海外で流行していますが、日本ではヒトを含めて限られた報告しかみられていないためです。
このあたりは最新の情報を常に確認していきたいと思います。

どんなワクチンにも副反応のリスクはありますが、一般的には多くの種類のワクチンほどアレルギーが出やすい傾向にあるため、予防のメリットとリスクを考慮し生活環境にあわせて必要なワクチンを選ぶことが大切です。

 

接種間隔について

WSAVAガイドラインやワクチンの添付文書によると犬の場合、コアワクチンの4種(ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬アデノ2型、犬パルボ)は3年ごとでも十分な予防効果が報告されており、それ以上の接種はすすめていません。

しかしパラインフルエンザは毎年の接種が必要です
パラインフルエンザはケンネルコフ(犬の呼吸器感染症)の原因のひとつとされているため、不特定多数のわんちゃんと頻繁に接触する場合、たとえばドッグランやペットホテルを利用する際には予防が必要です

ここでの問題は、パラインフルエンザウイルス単独のワクチンは販売されていないことです。
そのため、パラインフルエンザウイルスを毎年接種しようとすると、どうしても5種ワクチンを毎年接種する必要があります。

一方で他の犬に接する機会の少ないワンちゃんは5種ワクチンを3年ごとに接種することで大丈夫です。
ただしトリミングやホテルなどの利用には1年以内にワクチンを接種した証明書の提示が必要になる場合があるため、予定が決まったら早めに施設に確認しましょう。

レプトスピラ症の予防が必要なワンちゃんには毎年の接種が推奨されています
レプトスピラのワクチンは単独での接種が可能なため、他の犬と接する機会が少ない場合にはやや複雑にはなりますがコアワクチンを含んだワクチンを3年ごと、そのあいだの2年間はレプトスピラ単独のワクチンを接種するという方法をとることも可能です。

このあたりは獣医師と相談して接種プログラムを相談する必要があります。

 

高齢のワンちゃんにも予防は必要?

高齢のワンちゃんであっても、他の犬と接触する可能性がある場合にはワクチン接種は必要です

高齢になると散歩も少なくなったり、他の犬猫と接する機会も減るかもしれません。
そうしたライフスタイルの変化に応じて、ワクチンの種類を変える(減らす)ことも検討して下さい。

また動物病院では抗体検査を行うことも可能です
先に血液検査を行い、抗体が十分にみられる場合にはワクチンを打たないという方法です。
現在のところ検査できるのは犬のコアワクチン4種(ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬アデノ2型、犬パルボ)のみですが、少しでもワクチンの回数を減らしたいと考えている場合にはご相談下さい

 

まとめ

室内飼育、近所を散歩する程度→5種ワクチンを3年ごとに接種。ただしトリミングやホテルなどには事前に確認が必要

頻繁にドッグラン、ペットホテルを利用する→毎年の接種がすすめられます

アウトドアに遊びに行くことが多い→レプトスピラ症の予防できるワクチンを毎年接種

 

WSAVAの提案するガイドラインはあくまでもひとつの方針です。ワクチンの接種についての考え方やスケジュールは動物病院によっても異なるため、わからない点は獣医師に相談し、納得したうえで接種をうけさせて下さい。

竹林賢作

竹林 賢作

小さなころから生き物が好きで、動物博士になることが夢でした。動物図鑑に夢中になり、「動物奇想天外!」などのTV番組をかじりつくように見ていました。犬や猫に囲まれた思春期をすごし、大好きな動物のことをもっと勉強したい、病気の動物を助けたい、という思いで獣医大学へ憧れた獣医師になってもうすぐ9年、これからもペットとご家族の幸せのために努力していきたいと思います。