動物病院で診察する機会の多い病気は皮膚とお腹(胃腸)のトラブルです。
その中でもワンちゃんのかゆみトラブルは、柴犬やフレンチブルドッグなどアレルギーを起こしやすい犬種の飼育頭数が増加していることもあってか、年々診る機会が増えているように感じます。
診察では皮膚病の見た目や分布、各種の検査をおこなって診断をしていくことになりますが、
いくつかの皮膚病は原因が違っても同じような症状を示すことも多く、診断に迷うケースもしばしばあります。
しかし飼い主様としっかりとお話をすることで、診察室ではわからない自宅での様子やこれまでの経緯などが、診断の手がかりになるケースも多くあります。
今回は私が、犬のかゆみを訴えて来院された飼い主様に必ず聞いていることを簡単にまとめました。
動物病院を受診する前に一度思い出してみて、なるべくたくさんの情報を獣医師に伝えてみてください。
獣医師が教えてほしい5つのこと
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① ノミ予防をしていますか?
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② かゆみのひどい季節、ましな季節はありますか?
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③ いつ頃からかゆみトラブルが始まりましたか?
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④ 使っている(使っていた)お薬はありますか?
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⑤ 今食べているフード・おやつは何ですか?
犬にかゆみをおこす原因は大きく4つあります
・感染症(細菌、マラセチア、ニキビダニ、疥癬など)
・ノミアレルギー
・環境アレルギー(ハウスダストや花粉などに対するアレルギー)
・食物アレルギー
①ノミ予防をきちんとしていますか?
このうち意外と見落としがちなのがノミによるアレルギーです
ノミに噛まれるとその唾液の成分に反応してかゆみを伴うアレルギー反応が引き起こされます
散歩にまったく行かない、お外に全くでない場合には可能性は低いでしょう(ゼロではありませんので、予防は大切です)
散歩に行く、お外に行くのかどうか、またきちんと予防薬を使用しているかを教えて下さい。
また最近動物病院で処方されるようになった飲み薬では、ノミ予防以外にもニキビダニや疥癬の治療効果が追加されました。そのため使用しているお薬の名前も合わせてお聞きします。
②かゆみのひどい季節、マシな季節はありますか?
環境アレルギーはハウスダストや花粉など、生活環境にいる抗原(アレルゲン)が皮膚から取り込まれることでかゆみが生じます。
そのためそのアレルゲンが発生しやすい時期に一致してかゆみが生じるケースが多いです。
一般的にアレルギーの原因となるアレルゲンは春~秋に多くなり冬は少なくなる傾向にあります。
「毎年この季節になるとかゆい」「冬になったらだいぶマシ」そんな場合には環境アレルギーを疑っていきます。
一方で食物アレルギーは季節によって食べるものを変えていない限りは、通常一年を通じてかゆみが生じます。
③いつごろからかゆみが始まりましたか?
子犬のころから耳や肉球の間、目の周りなどのにかゆみが出ていた場合、食物アレルギーの可能性が高いです。
環境アレルギーやノミのアレルギーは皮膚から取り込まれるため、感作されてかゆみが生じるまでに時間がかかります。そのため早くても生後6ヶ月齢から、ふつうは1歳から3歳頃から症状が出始めます。
「子犬のころは全然へいきだった」「そういえば小さいときに耳が赤いと言われていた」などぜひ思い出してみて下さい。
④使っているお薬はありますか?
皮膚科ではいろいろなお薬を使って治療していきます。いままでどんなお薬を使ってきたのか、そのお薬は効果あったのかどうかも診断や治療に大切なポイントです。
例えばステロイドがよく効く皮膚炎ではアレルギーが考えられます。
ステロイドの効果があっても副作用がきつかった場合には、別のかゆみ止めを提案します。
抗生剤を飲んでいるのに皮膚に細菌感染をおこしていたら、別の抗生剤を使う必要があります。
また皮膚科では飲み薬以外にも外用薬や保湿剤、シャンプーなどを組み合わせて治療しています。
すでに持っているお薬があるならそれを使用することで治療費を抑えることもできます。
⑤今食べているフード・おやつは何ですか?
食物アレルギーは食事に含まれているたんぱく質に反応してかゆみが生じる病気です。
たんぱく質は鶏や牛、魚はもちろん小麦やトウモロコシ、大豆などの穀物にも含まれています。
現在食べている食事のなかのひとつ、あるいは複数のたんぱく質に反応してかゆみが生じている場合があります。
ドッグフードを使用している場合には、ラベルに原材料が記載されていますので確認してみて下さい。その他ジャーキーやボーロなどのおやつも要チェックです。
診察の結果から食物アレルギーが疑わしい場合、食事内容を変更することでかゆみの症状が改善するかを観察します。その際に今食べている食事がわかれば、新しいフードを選ぶアドバイスができます。商品名で結構ですので確認しておいて下さい。
皮膚科は他の診療科と比較しても、飼い主様との会話から診断のヒントが得られたり、治療方法を一緒に相談しながら決めていくことが大切な分野かと思います。
できればワンちゃんのことを一番知っている方が病院に連れてきてもらえる方ががいいかもしれません。
今回あげた内容を参考に獣医師にご相談ください。